大阪地方裁判所 昭和33年(レ)5号 判決 1959年2月19日
事実
X(原告、被控訴人)及びY(被告、控訴人)は、ともに一六会と称する頼母子講の講員で、同講は昭和二五年初設立され、昭和二六年一一月満講、講員は毎月一回金一万円宛掛金を払い込み、第二回以後講員が毎回入札の方法によりその落札者が順次落札給付金を受け取る定めであつた。Xは昭和二六年八月落札し、落札給付金二〇万円を受け取ることになつた。ところがその当時、Yは講会の初期に落札し講に対する掛戻金債務が全部で一三万円残つており、内一〇万円を延滞していた。Xは講の管理人の代理人から、右残債務を全部代払してくれと頼まれた。Xはその弟がYの右債務の連帯保証人をしていた関係上これを承諾し、Xの受け取るべき落札給付金のうちからYの掛戻金残債務一三万円を全額差し引いてもらつてYのため代払した。講管理人の代理人はその頃右代払をYに通知した。Xは右代払金一三万円の内金一〇万円と遅延損害金を求める本訴を提起した。
一審で敗訴したYは控訴して、仮定抗弁として「本件頼母子講の行なう業務は相互銀行法第二条第一項第一号に規定するものであつて、同法第四条によつて、免許を受けた相互銀行以外の者が業務として営むことは禁じられており、同法第二三条に違反者に対する罰則も設けられている行為であるから、公序良俗違反の行為である。従つて本件講会がYに給付した講金は不法原因給付にあたり、Yに対するその掛戻金債権及びその代払によるXの債権は請求できないものである。」と主張した。(その他の争点省略)
理由
相互銀行法は、金融業務の公共性にかんがみその適正を期するための行政監督と行政取締を目的とする法規であつて、一定の期間を定めその中途又は満了のときにおいて一定の金額の給付をすることを約して行なう当該期間内における掛金の受入行為そのものを禁止しようとするものではないのである。同法第四条に違反して、右行為を業務として営んだ場合にも、その違反者が刑事上の制裁を受けることのあるのは格別、その行為自体は公序良俗に反する不法なものということはできない。Yに対する本件落札講金の支払が不法原因給付であるとのYの抗弁は主張自体理由がない。Xの本訴請求を認客した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。